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蒔絵・高野松山 松田権六序文
買取上限価格 10,000円
定価 | 58,003円 |
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著者 | 高野松山 |
出版社 | 講談社 |
出版年月 | 昭和57年 |
ISBNコード |
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この商品について
高野松山さんが八十七歳で逝かれて、もう六年ほどになります。東京美術学校在学当時 には、私の二年先輩でした。高野さんは郷里の熊本で初めて漆の勉強をされ、京都に出て 京都市立美術工芸学校描金科に入学、そして卒業の後上京して、東京美術学校の漆工科に 入られたのです。
その頃から、目白の細川家の御屋敷内に住んでおられたようで、御当主細川護立さんに は特に可愛がられ、細川さんの依頼で最初の作品「竹塗花筒」(作品図版型)を完成したと聞いております。
細川護立さんは古美術はもとより、日本画から民芸にいたる芸術全般にわたって博識な 方で、実際の作品を眼の前にしての批評は正鵠を得ているばかりでなく、制作に携わる私 たちにも大変厳しく聞こえ、制作上の参考になりました。
その細川さんの側近くにあって漆のことばかりでなく、幅広く芸術上の知識を自然に身 につけることができた高野さんの環境を、私たち学生仲間では羨ましく思えたものです。当時東京美術学校の漆工科は、主任教授の白山松哉先生を中心に、助教授に石井士口、堀井政文、橋本市蔵先生らがおられました。高野さんの同期に生駒弘さんがおります。生
駒さんは、長年沖縄にて漆工の指導に専心しておられましたが、つい最近、故郷の秋田にもどっておられます。
高野さんは白山先生に親しく学び、卒業後も白山先生付きの助手として残り、橋本市蔵先生には変り塗の技術を学んでおられました。また、辻村松華先生からもいろいろ指導されておられたようです。高野さんは江戸風の精巧な蒔絵技術を会得した蒔絵作家で、昭和三十 年には第一回目の重要無形文化財「蒔絵」の技術保持者に指定されております。
高野さんといえば、特に思い出されるのが美術学校時代の独特な歌で、高野ぶしと呼ば れるほど有名なものでした。酒を嗜まれた時などよく聞かされたもので、今でもそういう 日々を懐かしく思い出します。
この度、高野松山さんの全生涯の作品集が刊行されるのに際して、同窓に学んだ作家と して大変嬉しく思っております。
高野さんのこの作品集は、これから漆工を勉強される若い人たちには勿論、現在漆工業 に従事している方にも必ず役立つものであると思います。