日本の名兜・3冊 笹間良彦 雄山閣
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著者 | 笹間良彦 |
出版社 | 雄山閣 |
出版年月 | 昭和47年 |
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この商品について
本巻は『日本の名兜』全三巻の完結編である。ここにあらためて全三巻の内容を振り返ってみれば、 上巻は日本の甲冑史上からみて、ちょうど機能的にも技術的にも、構造的にも完成期までの兜を取扱っており、中巻はその完成期前後から現れた、異色の創造性によって支えられる変わり形兜の多彩な 図録集である。そして本巻は、完成期の前後から、その伝統的構造と技術を墨守しようとする意志に よって、あるいはその技術の深化を目的とする函工によって、連綿と続いてきた本格的兜の図譜であ る。
その時代は本巻の扉にも明記しているように室町末期より江戸末期までである。 そして本巻の特徴といえば、実に完成期の構造と技術を連綿と伝えてきた、そのさまざまな国、の諸系にある。明珍・早乙女・根尾・馬面などの諸系の成立の要因を探ることこそ、本巻を理解する最大の手がかりともいえるのである。 それならば、なぜこのような諸系が成立したのであろうか。しかしその起因を解明するのに、 私たちはそれほどの苦労を要しないはずである。その場合私たちはその眼を日本文化史の上に注ぎ、 諸学問、諸芸術、諸工芸のなかに、多様な形で存在する諸系譜、諸系統の成立期の状況を考え、 共通性を引き出してみればよいからである。たとえば兜は武具であるという理由をもって、それに係する武芸の諸派とか、刀工の系譜などを考えてみただけでもよい。私たちはそのとき不思議の 系統の成立期の初代、あるいは二、三代までの作品が、一時代を画する創造性と完璧性を有している ことに気づくのである。
つまり流派や系統は、ほとんどの場合が、それらの完成期から始まるという事実である。もっと正 確にいえば、その完璧性と創造性を超えられないと知ったとき、その保存と持続によって生きようと する集団が生まれる。それが歴史的にも繋がるとき、一つの系統・系譜を成すように思われる。
再び眼を函工の系譜に戻そう。 この系統・系譜の成立要因もまた、他の関連諸工芸のそれらと比較 すると、必ずしも例外ではないようである。甲冑の完成期は、やはり室町末期前後と考えられるから である。