黄金背景テンペラ画の技法・油絵の母胎・現代の手によみがえるルネッサンスの板絵技法
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著者 | 田口安男 |
出版社 | 美術出版社 |
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この商品について
豊かな日本でこそ,今後の発展を期待できるので はないかと考えることがあります.その上,今日 の緊急課題である油絵具と合成樹脂絵具との融合 をはかる上で,このテンペラ技法の研究は欠くこ とのできないものなのです。合成樹脂の絵具によ る技法は,アメリカでひと頃テンペラと呼ばれて いたことがあるのは興味のあることです。現代の 言葉でいうなら,ともにエマルジョンという意味 でつながりの深いものなのです.
石膏下地からメノウ磨きの過程については, と くに詳しく説明するように心がけました.この厄 介なところを通過すれば,後は画家の望みに応じ てどのような現代の表現も可能なのですから.また,この技法のために必要な材料や小道具が 日本では手に入りにくいという事情も考え,どこ まで手作りできるか,どこまで身近にあるもので 解決できるかを報告することにしました。
今年(1978年)2月には,石原靖夫氏によるシモ ーネ・マルティーニの祭壇画,受胎告知の復原研 究が発表され,また一方ではテンペラと油彩,合 成樹脂絵具との混合技法の研究が若い画家たちの関心を呼び,マックス・デルナーの技法書も翻訳 される気運にあります.
一人の画家が特殊な技法に首をつっこんでいる ということではなく,巨視的な地点からみれば,テンペラという言葉が,未来のさまざまな絵画技 法を大きくしめくくるものとして発展していく気 配を私は感じています。
本書がひとまず, テンペラというものの足元を 固め,啓蒙期の役割を果たすことを願いながら、
1978年 11月 田口安男