日本の絞り技法・資料編・技法編・2冊 安藤宏子
買取上限価格 5,000円
定価 | 19,417円 |
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著者 | 安藤宏子 |
出版社 | 日本放送出版協会 |
出版年月 | 1992年 |
ISBNコード |
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この商品について
技法 絞り染めは、糸で括ったり、縫い締めたり、板ではさんだり、また簡単な道具を補助的 に使用しただけで、文様を染めだす染色法である。
ンド、中国、アフリカなど世界各地に、絞りの長い歴史のある地域が見られるが、我 限り が国ほど、服飾文化のなかに多種多様な絞り技法を取り入れ、発展させた国は、他には見 られない。日本はまさに、絞り染めの宝庫である。
上代からの歴史をもつ絞り染めの産地、京都では、その素材を絹・麻に求め、主に上物 を生産した。名古屋の有松・鳴海は、木綿の絞りを特長に江戸時代からその歴史が始まっ ている。各生産地は競い合い、つぎつぎと新しい絞り技法を生み出してきた。有松・鳴海 では、絞り染めは今日でも、伝統産業として継承されている。しかし、服飾生活の急速な 変化と、技術保持の高齢化に伴う後継者不足などから、これらの産地では、昭和初期には 100種以上あった絞りの技法も現在では40~50種を残すだけというほど、伝統の灯は細く なっている。絞り染めは、その工程が完全に分業化されているため、一人が一つの技法を 保持しているという場合が多く、絞りの技術・技法を全般にわたって伝えることは不可能 に近い。このため技術保持者が姿を消した時点で、その技法も消滅することになる。
25年以上前の有松・鳴海では、表通りを一歩入ると、縁側で括り作業をする風景が随所 に見られた。絞りの技法を教授してもらうために訪問すると、どの家でも盆点てで抹茶を 供してくれ、さすがに400年の歴史のある尾張徳川家のお膝元と感じいったものである。し かし、当時隆盛を誇っていたこの産地でさえ、技法によって括り手はただ一人という状況 もあった。
その中でもとくに忘れられない人がいる。手筋絞りの名人で、入院中にもかかわらず、 手ずから「菊田柳絞り」、「蓑絞り」などを教えていただいたがその結果を見てもらうことも。 なく、亡くなられ、幸いにも受け継ぐことのできた技法は文字通りの遺産になった。
こうして多くの方々の好意でさまざまの技法を教えていただく一方で、つい先日まで生 産されていた絞りが、後継者のないまま姿を消していくことに危機感を抱き、微力ながら 受け継いだ技法を後世に伝えることができればと願ってきた。