灯籠 川勝政太郎・岩宮武二
買取上限価格 5,000円
定価 | |
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著者 | 川勝政太郎 |
出版社 | 集英社 |
出版年月 | 1973年 |
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この商品について
わが国の燈籠が工芸品として、また歴史時代の考古学的遺品として注目され、その学術的研究が行なわれる ようになったのは、西洋の学問方法のはいってきた明治以来のことである。わが国の石燈籠研究の開拓は故天 沼俊一博士(昭和二三波)によって行なわれた。明治三十九年に奈良県技師に赴任して古建築の修理保存に従っ て以来、京都府技師、京都帝国大学教授を歴任する間に、石燈籠の系統的な研究を進められたのである。「奈良県下に於ける慶長以前の石燈籠」(建築雑誌第三十一号、大正元・一一)を発表し、ついで『近畿に於ける慶長 以前の石燈年表』(未定橋、大正九・一○)を作成して建築学会で講演され、昭和三年の京都博物館夏季講演会で 講じられた「石燈籠」(京都博物館講演集第七号、昭和五・三)が公表され、これらの業績をふまえて大著『石燈 籠』(昭和八・一二)が完成し、ついで『慶長以前の石燈籠』(昭和一二・三)が世に送られた。このようにして石 燈籠の研究は天沼博士の独壇場であり、庭園史学者の石燈籠についての発表もあったが、散発的であった。
昭和三年以来天沼博士に師事した私は石造美術の研究に熱を入れてきたが、石燈籠の研究はその中の大きい 部分を占める。はじめ『燈籠・手水鉢』(昭和一○・一O)という簡単な書物を書いたが、その後の研究を総合して、『石燈籠通説』(茶道雑誌連載、昭和四三・七終)を七十二回にわたって講述した。そうして今回の本書の執 筆ということになったが、なお将来の石燈籠研究書作成を自分としては期しているのである。最近、京田良志 氏著『石燈籠新入門』(昭和四五・一一)が世に出たが、私どものあとを継ぐ新進研究家の出たことは喜ばしい。 次に金燈籠・釣燈籠の方面について見ると、故香取秀真翁(昭和二九没)の業績が高く評価される。東京美術
学校教授、芸術院会員に任じられた高名の鋳金家で、昭和二十八年には文化勲章を授けられた。金工史の研究 にも意欲的であり、明治末年以来数々の著書論文があるが、金燈籠関係については『金工史談』(昭和一六・一 二)に収録された「釣燈籠と燭台」と、第八回東京鋳金会展観の際に作成された『日本金燈籠年表』(大正五・三) がまとまったものである。奈良在住の金石史家故高田十郎翁が、春日大社に現存する千基に近い釣燈籠を調 べ、「奈良春日神社の釣燈籠の銘文一一一二」(なら第一九号|四七号、大正一二・八―昭和二,一二)にまとめられた 努力は記憶さるべきである。また金工史専門の前田泰次氏の「釣燈籠及び雪見燈籠雑考」(画説第四号、昭和一二・ 四)もあるが、その後に至っても金燈籠・釣燈籠の歴史をまとめて書いたものが見当たらぬのは寂しい。もっとも社団法人照明学会の『日本古灯器大観』(昭和六・三)の大図録が出て、その中にかなりの数の全国の金燈 籠・釣燈籠が出ている。しかし解説はあるが歴史を通説した本文がない。