信家鐔・付・中村覚太夫信家鐔集
買取上限価格 2,000円
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出版社 | 刀剣春秋新聞社 |
出版年月 | 昭和56年 |
ISBNコード |
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この商品について
信家は金家と並び鉄鐘の両横綱であることに大方の異論がない。 古来、名工としての評価がつとに高く、愛鐘家の間に賞美されかつ 広く皆言されて久しい。
名実備わる人気作家の一条件は、高度の芸術性に加えて、現存す る作品量の稀少さに支えられることがあるが、逆に、作品の多量さ からくる普遍性による場合がむしろ多いようである。前者が金家で あり、後者が信家であろう。
金家は比較的に寡作家であり、作技に優劣が少ないが、信家には 上限と下限の幅が広く、よって一面、必ずしも高価なものばかりと は限らないところに、親近感をもたれる一つの事由があるように思 われる。金家は容易には手のとどかない「高嶺の花』の魅力といっ たものがあるが、信家にはその正真作のすべてが,高嶺の花”とば かりは限らないところに一つの普遍的な要素があるといい換えられ よう。
信家については、古くから多くの研究家によってさまざまに研究 され、追究されながら、未だに明解されない部分が残されている。 大字銘と放れ銘の前後関係、三信家の解釈、あるいは代別について の問題など、必ずしも明瞭にされているとはいえない。それだけに 信家の存在は、幾多の未知の魅力を秘めた巨人の姿を横たえている かのようである。
これまでに信家の研究を部分的にまとめた論述はしばしばみうけ るが、未だその研究を集大成したものをみない。そこで当代研究家 の協賛をいただき、信家を多角的な見地から見極めようと各論を収 載して一書とすることになった。信家研究の成熟とその集大成への 一つの契機となるであろう期待をこめ、本書を刊行するものである。
信家の研究と愛好に欠かせない好資料を供してきたのが斯界に膾 死する『中村覚大大信家算集』であり、信家の錦図百四十三点を所載したものである。
同書は大正十五年五月に、故川口〇氏によって 刊行されてすでに五十有余年を経過し、古典書の一つとなり、また 稀親本となって、はなはだ入手が困難な実情となっている。こうし たことから、多くの研究家、愛好家の声に応えて本書を完全複刻し て付載することにした。
もともと『中村覚太夫信家鐔集』を複刻しようとするのが主旨であり、同書に所載する現存作品を一枚でも多く写真にして収載する ことにつめた。したがって、本書は信家の名作を写真で網羅して構 成しようとしたものではないが、その後、諸先輩のご意見によって、 同書に所載しない信家鐔をもできるだけ収載し「信家賀選」の写真 集を加えるこにした。短時間のこともあって可能な範囲で多くを収 載することにつとめたが、名作ではあっても写真が鮮明でないもの は残念ながら掲載をみあわすものもあった。したがって本書に収載 しない他に信家の名作があることはもちろんであり、これらは別の 機会に収録したいと念じている。小社の写真資料と新たに撮影した もののほか、「尚友会」での信家研究の写真資料、『刀剣金工名作集』 に所載される写真資料から各位のご好意によって採用させていただ いたものがある。
論文を執筆下さった各先生方をはじめ、加島進先生からご助言を いただき、心から厚く御礼を申し上げたい。若山泡沫氏の労をわず らわし『中村覚太夫信家算集』の押形についての評を収載した。斯 道の大先人、收秋山久作翁が付した注解をそのまま活かしたのは古 典書を尊重する意図からにはかならず、押形評と合わせて参照いた だければ幸いである。
笹野大行、園平治、吉野辰雄各先から格別のご高配をいただ き、雄山閣の芳賀章内編集長から心よく写真資料を提供下されたご 厚志と合わせて、深山の感謝の意を表したい。 昭和五十五年十月吉日