書・出光美術館蔵品図録

今回の蔵品図録においては、古筆切を国文学の 資料という視点から、鎌倉から室町初期にかけてのもの まで、広く見直すことを試みた。この結果、三件の手鑑 をはじめ、数点の作品を明らかにすることができた。古 筆切を広く見直すことによって、それぞれの時期の古筆 切のなかに、それなりに美しいものが見出せるようになったことは収穫であったと思う。今後、国文学の分野か らのデータや、あるいは別の、たとえば料紙装飾の方面 からのアプローチが、今まで書様にのみ頼っていた書写 年代の判定に一助を与え、ある時代に、より正しく位置 付けられた古筆切群を通して、古筆における書様の流れ みることが可能になればと考える。