女子宮廷服と構成技法・洋服編
買取上限価格 10,000円
定価 | 19,800円 |
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著者 | 久保房子・小沢昭子・林八重子 |
出版社 | 衣生活研究会 |
出版年月 | 昭和56年 |
ISBNコード |
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この商品について
私達が、最初に大谷篤子夫人のドレスを調査して、家政学会に発表してから丁度10年の歳月が流れました。当初は原形を止めていたこのドレスも、表地が薄いシフォン/クレープであった事もあって、現在は殆んど表地が風化してしまっています。いくら保存を良くしてもいずれは脆化し形を止め得なくなるに違いありません。明治16-17年から婦人洋服は、日本服装史の上からも又被服構成技法の上からも、現代では大切な文化遺産であり、私達は、被服研究者として、遠からず消え去って行くであろうこれら(大部分は宮廷服である)の実態を調査できるように、詳しく調べ後世に伝える義務を感じ、現存する明治・大正の女子宮廷服を求めて歩いたのです。
英国のビクトリア・アルバート博物館のように、完全な保存体制があるわけでなく、わが国の場合はその殆んどがゆかりの社寺或は個人の所有であり、各地に分散されて簡単に見せていただくわけにはいきません。虫干しで蔵から出すという連絡をいただいてとんで行った事もあります。原先生の所の大礼服も、大きな長持のような箱に入っていて出すのも大変であったし、それぞれ調査させていただくに当っては、並々ならぬ御協力をいただいて調査させてもらったものです。
手でさわるだけでも損傷の原因になるので、手袋 をはめて直接には触れないように注意しながら、それでも風に当てるだけでも生地が弱りはしないかと心配したものです。調査させていただく時間は短かく、大急ぎで布目線をたどりながら採寸をし、しかも生地を傷めないように注意をしながら縫製の仕方も詳細にメ モを取るのは、神経をすり減らす仕事でありました。メモから製図に直す時に、必要な採寸が欠けていたり、できた製図が不安だったりすると何日も写真と睨めっこをします。その挙句接ぎ目を見つけて納得できた事もありました。採寸が足りなかったからもう一度調査をさせてもらうという事が許されないのです。この中には以後誰にも調査をさせないといわれている貴重な資料も含まれています。
今これらの一つ一つの洋服に思いを馳せながら、この本を出版する事により調査の詳細を後世に残すことができて、漸く責任が果たせた思いがいたします。
(小沢昭子)