備前刀-長船鍛冶の巨匠 長光展
買取上限価格 4,000円
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出版社 | 佐野美術館 |
出版年月 | 平成元年 |
ISBNコード |
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この商品について
渡辺
両先生はじめ、多くの皆さまのお蔭で,刀剣界初の長光展が開かれるこ とになりました。この展示場には50本を上まわる名刀が集まります。ところで, なぜ長光展か,刀剣王国長船の巨匠について,大いに語っていただきたいと思い ます。
一文字と長船
広井
平安期から室町末期まで,備前国はまさに刀剣王国であり,特に“備前 長船”は名刀の代名詞にまでなっている。備前には,技術的にも優れた名人名匠 が続出したわけで,鎌倉期から起こった一文字派の刀匠たちも名人揃いで,他に みられない特色ある素晴しい作品を作ったけど,長船派の歴史に比べると,その 隆盛の期間は短い。
小笠原
備前福岡での一文字系刀匠の活躍した地域ですが,どこかというと厳密 には不明ですね。一遍上人絵伝に福岡の地の風景はありますが,刀工の活躍地と いうことではないし,永仁5年紀の重美の太刀に「備前国福岡住左兵衛尉長則 造」がありますが,これは一文字派として末期に近い時代です。一文字派の刀匠 と長船刀匠の勢力関係はどうしても異る。一歩踏み込んだ発言ですが,光忠の親 の近忠は,作品は無いですが,この近忠は一文字派の活躍した集団あるいはその 地域にいたと考えます。
広 井
確かにそうです。ただ,小笠原さんが『大素人』に記していたように, 一文字派の中で,「一」の字だけのものと,刀匠の個名を切った作品と,作風に差 異がありますね。 小笠原 そのように思います。大別しますと,「一」の字だけのものはどちらかと いうと華やかではあっても刃が小ずんだ作風で,個名の例えば吉房などのような ものは重花丁子大らかなものが多い。 広 井 光忠にも華やかな乱れと,さほどでないものがあり,長光にも勿論ある。、 この華やかな重花丁子の時代をどうおさえるかですね。
小笠原
一応時代性ということを考慮しなければならないでしょう。一文字,光 忠,守家など,重花丁子の大乱というのは建長頃の比較的短い時代だと思うんです。
鎌倉時代,備前長船の巨匠・長光の名刀展を開催いたします。 長光は,父・光忠にその優れた技法を伝受されるとともに,一族以外の刀工 をもまとめ組織化して,長船派隆盛の基礎を築きました。長光在銘の太刀など は,700年後の今も古刀中で最も多く現存し,その作風は,鎌倉時代の武家文化 の影響を受けて,豪壮華麗なもの,静謐な気品高いものなど,まことに多彩で あります。そして,いずれも鍛えられ,研ぎ澄まされた黒鉄に,神秘の華を咲 かせました。
昨年昭和63年1月,静岡の故佐藤寛次氏により,長光の薙刀(国宝)が佐野 美術館に寄贈されました。
本企画はこのことを記念するとともに,長い間厚いベールに被われた名匠長 光の実像を浮き彫りにしようとするものであります。
本展開催にあたり,多大のご指導、ご協力を賜りました, ご所蔵者(館), 関係各位に深く感謝申し上げます。
平成元年正月
佐野美術館