裏日本
買取上限価格 10,000円
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著者 | 浜谷浩 |
出版社 | 新潮社 |
出版年月 | 昭和32年 |
ISBNコード |
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この商品について
裏日本 浜谷浩氏の第三写真集。発行年度が古いものですので、カバーの有無や状態で買取価格は変動します。また署名があればポイントが高くなります。
一人の運命を握っている場合はかなり多い。辺境にゆくほど率は高くなる。 人間と風土との関係を見逃すことはできない。
生れた時から人間と人間とのバランスはとれていない。が、人間はお互に バランスの安定に努力することが必要ではないか。元来、自然現象も、人間 の世界も極めてアンバランスなものだ。沙漠地帯と湿潤地帯、熱帯と寒帯、 表日本と裏日本。だが、自然には自然の秩序がある。台風でさえ自然の秩序 従って行動している。蟻や蜜蜂の生活には厳然と秩序が保たれている。 人間は秩序を必要としながら、秩序を破ることによって進歩してきた。日日蓄積される巨大な人間の叡智は、秩序を乗り越えて、新しい世界を築きあ げた。それが文明とか、文化とかいうものである。その足跡は反面人間のア ン バランスをさらに増大してゆく。センス・オブ・プロポ ー シ ョンの欠如。 文化の落差はいよいよ激しい。それもやむを得まい。ところが、やはり、こ こで考えなければならないことは、常に人間は人間を理解し合うことだ。
私たちは孤独で生きることは不可能である。今日では、部落単位に暮らす ことはできない。都市だけで生活することも困難である。国はたとえ独立し ていても、外国との交流を断っわけにはゆかない。きわめて簡単なことで、 これが人間生活の基本原則の一つであり、よりよい生活への道標でもある。 他と交わるために、他を知らなければならない。相互理解は国際的な課題で
もあるが、日本人同士の課題でもある。
人間が、人間を理解するために、私自身、実験する必要があった。私の第 一写真集「雪国」も、第二写真集「辺境の町」も、その実験の過程として生 れたものだった。「雪国」は 新潟県下桑取谷西横山という二十五軒の谷間の 村の、小正月前後六日間の行事を主題にしたものである。十年間通い、狭い 地域の短い期間を精密に撮影する方法をとった。「辺境の町」は中国新疆省の ウルムチを見たもので、砂漠地帯の人間が対象となった。
「裏日本」は第三写真集になる。前の二冊と共に、いずれも現代から遠く離れた人間の生活が、対象となっている。私は、私自身の理解を深めるために、 そのような土地と、悪い条件に向って歩いていった。
「裏日本」に集められた写真は、ために、比較的人々の間に理解されてない 面に重点をおいた。もちろん、これが、裏日本を代表するものではない。し かし、これも、裏日本である。私の実験は、まず眼で見ることにあった。こ の本で私の願いは満たし得なかったが、この中の幾枚かの写真から、日本人の生活の断面を読みとって、理解して頂ければ幸いである。