日本画・書跡の損傷-見方・調べ方
買取上限価格 1,000円
定価 | |
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著者 | 東京文化財研究所 |
出版社 | オフィスHANS |
出版年月 | 2013年3月 |
ISBNコード | 978-4-901-794-46-6 |
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この商品について
日頃、私たちが美術館などで鑑賞している書画などの文化財(書画文化財) である古美術品は、実は制作当初の姿をそのまま伝えるものはほとんどないと いってよいものです。これらの文化財の多くは、経年によって劣化したり、物 理的な要因で損傷したり、あるいは保存環境が適正でないことから起こる汚れ や虫菌害などによって傷んでいたものを、「装漬」という高度な保存修復の技 術を用いて修復したことによって、書画などが持っている本来の輝きを蘇らせ たものです。
現在の装漬技術は、近代の文化財保護の過程で高度に磨き上げられてきたも ので、作品本来の持つ姿をできるだけ引き出すために、伝統的な手法に加え、 新たに保存科学という学問分野も取り入れた手法によって後世の汚れを除去し 損傷後を繕うとともに、可逆性のある修復技術として確立しています。
しかし、この技術を用いて書画文化財を修復することは、文化財を保存する ためのいわば最後の手段といえます。本来、伝世の文化財を後世へ良好な保存 状態で伝えるためには、高温多湿の我が国では、古来より定期的に外気にさら す曝涼が行われて、必要に応じて修繕もなされてきたように、適切に管理して いくことが求められます。また、文化財などの保存についても、たとえば書画 文化財などは和紙にくるみ、箱に入れて土蔵内の整理棚に安置して保管するな ど、周到な取扱いが必要とされています。
本書は、所有者や美術館・博物館の学芸員などの関係者を対象に、書画文化 財の保存管理に関する理解を深めてもらおうと、多くの実例に基づいて書画文 化財の素材と構成、破損原因の究明とそれを防ぐ取扱いにおける留意点などに 焦点を当て、合わせてそれらを修復するにあたっての装遺技術に関する基本的 な事項についても解説するとの方針に基づいて作成したものです。
本書の執筆は、東京文化財研究所保存修復科学センターで日頃文化財の保存 修復に関する基礎的な調査研究を行っている研究者や、彼らとともに装遺分野 の現場で保存修復の実務にあたっている第一線の技術者があたりました。
本書は、文化財の所有者や博物館などの学芸員などに向けた保存管理の手引 き書といえるもので、多くの関係者に読まれ文化財の保護に大いに貢献するこ とを願ってやみません。