肥前渋江諸家文書目録・渋江公昭家文書目録 神奈川大学歴民調査報告書

肥前渋江諸家文書目録・渋江公昭家文書目録 神奈川大学歴民調査報告書等歴史書3箱お譲りいただきました。タイトルだけから判断しますと、何の本かわからないかと思います。一言でいえば河童の研究の本になります。

渋江公昭家(肥後渋江氏本家)に伝存する文書は、河童=水神信仰を総 合的に研究するうえで、質量ともに他に全く類例を見ない貴重な史料(資料)群である。江戸時代の資料に基づいた本ですのでさすがに、図版はないだろうと思っていましたが、図版も収録されている貴重な資料集になります。

河童伝承大事典も過去に紹介しましたので、気になる方は併せてご覧ください。

河童=水神信仰を総合的に研究する上で質量ともに他に全く類例を見ない貴重な史料(資料)群

はじめに

本書は、神奈川大学歴史民俗資料学研究科の大学院生たちがゼミ横断的な研究活動として渋江公昭家文書(熊本市)の解読に取り組み、その最初 の成果を刊行したものである。本書には、渋江家文書の三分の一程度の目 録を載せるとともに、そのさらに何分の一かに当たる分量の文書を翻刻し て、釈文を原史料の写真(影印)版と上下対照できる形で収録している。 院生たちは、これから本書を手掛かりにさらに研究を進めるとともに、今後も目録作りを継続し、新たな研究成果と合わせて、順次刊行して行く ことになる。実のところ、これまでは接写した資料の整理に追われ、実質 的な研究は漸くこの段階に到達したに過ぎない。これからは、地元熊本を 初めとする様々な方面の方々と密に連絡を取り合いながら、そのお力とお 知恵を拝借して、渋江公昭家文書の真価を世に問う責務を私たちは負わさ れている。

それでも、本書の刊行を嚆矢として、渋江公昭家文書を用いた研究にい よいよ本格的に着手できることの意義は、本研究科にとっても、また学界 (民俗学、歴史学、社会=文化人類学)にとっても、決して小さなもので はないと確信する。

渋江公昭家(肥後渋江氏本家)に伝存する文書は、河童=水神信仰を総 合的に研究するうえで、質量ともに他に全く類例を見ない貴重な史料(資料)群である。

「マイクロ・フィルムによる接写を手始めとして、同文書の調査と整理は、 一九九九年以来、神奈川大学日本常民文化研究所(常民研)内の共同研究 「九州のカミ観念と信仰の歴史民俗資料学的比較研究 | 河童を中心として」 の中心的な課題となった。また、(同研究所を母体とする)大学院歴史民 俗資料学研究科は「渋江公昭家文書研究会」を組織し、大学院生たちが常 民研の所員や研究員とも連絡を取り合って、ゼミ横断的な研究活動を行って来た。

その最初の成果が、二〇〇五年三月に刊行された『渋江公昭家文書目録』 (一)〔田上、二〇〇五)である。『渋江公昭家文書目録』(一)は、同家文 書全体の三分の一程度の分量の文書の個々の概要を一覧に供する目録であ る。ただし、それとともに、さらにその何分の一かに当たる分量の文書の 釈文を原史科の影印の下段に収載して、読者の便宜を図っている。 『渋江公昭家文書目録』(一)の公刊は、渋江公昭家文書という河童=『渋江公昭家文書目録』(一)には、同家に伝わる文書の内、(私たちの – 発見時に)熊本市内の自宅に保管されていた分のほぼ半分を収めた。一方、 この『渋江公昭家文書目録』(二) は、『渋江公昭家文書目録』(一)に載 せられなかった、残る半分を収録している。これらの史料の他に、同家が 管掌する菊池市大字水源の天地元水神社鞘堂にも、熊本市内の自宅に保管 されていた文書の約二分の一ほどの分量の文書が埃を被って残されていた。 その史料も接写を既に終え、整理もほぼ完了している。順調なら、二〇〇八年度末に『天地元水神社文書目録』(仮題)として刊行する予定である。