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女子宮廷服と構成技法 原のぶ子監修・久保房子・小沢昭子・林八重子共著 衣生活研究会 衣生活研究会発行のスライドを以前お譲りいただいたことがあるのですが、資料的価値はあるものの、スライドに関しましてはあいにく需要があまりありませんので、買取は難しい状況です。
この本を紹介する際に久保房子 さんの宮廷衣装の本を最近紹介したばかりと思っていましたが、検索をかけても見当たりません。画像をとった覚えはあるのですが、忘れていたようです。見つかり次第アップロードいたします。
なお、宮廷衣装の図録あるいは公家装束の本は以前に紹介済みです。宮廷衣装の本は図録を含めて専門的でかつ発行部数も少ないのでご興味がある方は下記も併せてご覧ください。
こちらは宮廷衣装の図録になります。宮廷の装い
久保房子さんが私の学校に入学されたのは昭和21年4月でした。その後師範科を経て後 輩を教え、また私のアトリエでも勉強し、昭和37年ご主人の転任で大阪に行かれるまで、 被服の基礎から服飾全盤に渉って研究されました。大阪ではすぐ短大の講師として洋裁を 教える一方、日本服装史を勉強し、かねてから興味を持っていた宮廷衣裳という未開拓の分野をテーマとして、独力で研究を続けられました。
その第1回の成果が昭和50年、衣生活研究会から発行された「明治大正期の女子宮廷服」 でありました。今回はその続篇ともいうべき「女子宮廷服と構成技法」の著者代表として、 この本をまとめることに努力されております。
林八重子さんは昭和31年私の学園に入学し、本科・研究科・師範科を卒業、研究のかた わら学園の教諭として私を助けて下さいました。林さんは特に被服造形に興味を持って研 究しただけに、今回の構成技法の観察や表現法は緻密で正確であると思われました。結婚 後も服飾研究を続け、宮廷服の洋服の分野で久保さんに協力されてきました。
小沢昭子さんは私の学園の卒業生ではありませんが、たびたび学園の講習会に出席され ており、卒業生同様に親しくさせて頂いております。和服洋服の双方に通じておられ、久 保さんの研究のよき協力者であると伺っております。
宮廷女装の実態が最近まで解明されなかったのは、一般人に開放された領域でなかった ことが大きな理由です。宮廷の旧奉仕者である久保さんによって道をつけられた宮廷服の 研究は更に色いろな面から解明されるべきであり、またその研究者も多くなるものと思わ れます。 今回の価値ある出版に当って、私にその監修をするようにとのお話がありました。 私としても著者がみな私に深いつながりのある方がたですので、その任ではございませ んがお役目をお引受けした次第です。
当時の洋服の仕事を拝見すると、やっぱりナポレオンの時代からのものが影響を残して います。大礼服の形式にも、他のものにも。歴史は続いていることを実感します。服を通 してその国の特殊な伝統というものが良くわかります。この本を御覧になれば理解される と思いますが、明治の洋服-宮廷服が、外国のきものというだけではなくて、我が国の生 き方、特に皇族、皇室の在り方、我が国に合わせた洋服の形の生き方、そういうことを充 分に考えていますから、単なる形式的な真似だけとはいえないようです。
長い間のしきたりによって、服の形も変えましたから、西洋のままの洋服ということは ないのです。そういうところが非常に研究になると思います。
時代が変っても、国情によって、伝統によってその国の特徴がありますし、社会的に見 た場合、流行だからといって、簡単にいくものではなく、やはりお互いに実生活を考えてやります。その証拠に例えば鹿鳴館では、その建物に合わせて衣服を考えるようなことまでやっています。
これは当然のことで、今日でも、そういう考え方を持って 洋服を見なければいけないと思います。 日本の洋服の最初の歴史によって、服飾を研究するのには大変便利な本だと 技能、技法も、正確に基礎を修得した人たちが書いていますから、例えば形の一 造形も、布の扱い方が正確に地の目をみて合わせ、そして形になっています。
それに服飾手芸、飾るところは勿論、飾り方、技法、技術、こまかい技術はありませんが、刺繍にしても、ビーズの糸の飾り方までこまかに書かれていますので、非常に参考になると思います。
洋服は、国情の異ったところで育ったものですから、充分に研究して、そしてわが国の衣服にするという考え方が大事なことです。
歴史を見たり、技法をみたりすることが、服飾研究家にとって一番大事なことで その参考になる本がここに刊行されました。是非おすすめしたいと思います。
昭和56年5月
監修者原のぶ子
今から6年前、私は「明治大正期の女子宮廷服」という拙著を衣生活研究会から出版いたしました。
第2次大戦後君主国の数はごくわずかになりましたが、それまでは世界のどの宮廷でも 女子衣裳にはその国最高の服飾技術が用いられておりました。このことはわが国において も同様で、宮廷に伝承された女子宮廷服には衣服文化の最高水準を示す品が数多く用いら れています。ことに明治・大正時代は、洋服も加え、わが宮廷で最も多様多種の女子衣裳 が用いられた時代でありました。
しかし、それらの衣裳は、戦前は宮廷の秘密主義によってそのほとんどが国民の眼に触れることなく、また戦後は目まぐるしい衣服革命の風潮のうちに忘れ去られています。
そのため、博物館や社寺の宝物館等で大切に収蔵されているわずかの品を除き、大多数 の貴重な遺品は歳月の経過とともに散供したり劣化したりして、滅失する運命に置かれて おります。私は彼服研究者としてだけでなく、宮廷の旧奉仕者の一人として、文化遺産で あるこれらの宮廷服の実態が人に知られることもなく滅び去ることには堪えがたい思いが しました。
そこでできるだけ現在の遺品について実態調査を行ない、それを学会などで発表すると ともに、写真や文字によって宮廷衣裳の実態を残して置きたいとの願いから、上記の標題 でわずかの部数の限定出版をした次第でした。
ところがこの特殊な書物に対し思いの外の反響があり、間もなく品切れとなる一方、出版元ばかりでなく、直接私にも色いろお尋ねがくるようになりました。
こうして多くの方がたからのご要望が続きましたので、昭和52年に一般向けとして毎日 新聞社から「宮廷衣裳」を上梓いたしました。
しかしその後も、学校関係の方がたから主として宮廷衣裳の被服構成等についてのご質問が寄せられることから、今回再び衣生活研究会にお願いして、その後の調査結果を加え た明治・大正時代を中心とする女子宮廷服(洋服)の実態を構成技法に重点をおいてご紹 介することにしました。
前回は私の方針に従って協力して下さった方がたが、今回は独自の立場でそれぞれ担当 した洋服の技法を述べており、また著者の共通の思師でありオーソドックスな西欧の服飾 技術ではわが国第一人者の原のぶ子先生に監修して頂いたので、より充実した入門書にな ったことと存じます。
本書が宮廷服に関心をお持ちの方に何かお役に立つことがあれば、著者一同のこの上な いよろこびでございます。
昭和56年5月 著者代表 久保房子
復刻版・日本色彩文化史/前田千寸
前田千寸氏の『日本色彩文化史』の再版
上村六郎
前田氏のこの大著は、最初に出版された当時から、すでに稀親本のような存在になって しまって、入手の極めて困難な本の一つである。それは日本の古くからの染色を、実際に 染めつけた数多くの貴重な標本と、それについての、文化史的な研究並に解説を付した、 全く類書のない、誠に珍らしい書物だからである。それが今回再版されて、標本の染色の 染料は原著と異るとはいうものの、示されている色そのものは実に忠実に原著のままに染 め出されているので、恐らくは原著と同様に、研究者、或いは業者はもとより、染色の愛 好家にとっても、等しく注目の的となることであろうかと思われる。
井上靖
「名著の復刻を喜ぶ」
「日本色彩文化史』は著者前田千寸氏が、文字通りその生涯をかけた大著 である。王朝文化の実体を古代染色の面から綜合的に追求した唯一の仕事 であり、その点不朽の価値を持っている。ただ一つ残念なことは、中に収 められている著者自ら調製の染色標本の量が限られているため、増刷がで きないことであった。その点入手困難な幻の名著という他なかった。が、 こんど上村六郎氏の協力によって、その隘路が切り開かれたと聞く。最近 での明るい話題である。たまたま今は亡き前田千寸氏の人柄に傾倒し、そ の生涯の仕事を比較的近いところで見守っていた者として、こんどの朗報は自分のことのように嬉しい。
復刻にあたって
前田千寸先生は、わが国色彩文化の特質を闡明にすべく、五十余年に及ぶ研究ののち、古代日本の 色彩を復元して大著「日本色彩文化史』を完成、昭和三十五年にこれを小社より上梓されました。わ 国古来の植物染料と媒染剤、染色技法を探りつつ著者自身の手で復元された本染四十二色は、発表 時、学界、染色業界等識者の注視するところとなりましたが、染布の関係で部数が限定され、多く 方々に本書をお届けすることができませんでした。以来、本書は入手困難な稀親本となり、各方面 ら強く再刊を望む声が寄せられて参りましたが、この御要望にお応えして、このたび小社は、染色の 威として知られる上村六郎先生の監修を仰ぎ、新たに化学染料によって原著の本染と同じ色を復元、これを貼付した復刻版を刊行することといたしました。今回の復刻版もまた染布の関係上限定版と、 さるを得ませんが、各方面の御要望に添うことができますれば幸いに存じます。
古代の色彩文化を理解するには、色 彩に対する古人の心理活動の状態を 明らかにする必要がある。そのため には古代色彩の実相を知り、且つ文献的事実を裏づけする実証的根拠を 得なければならない。江戸時代の学 者の手に成る断片的な論考が、往々 問題の本質から逸し、或はその結論 が誤謬に陥ったものがあるのは、そ の考察が文献に偏して実証的根拠を 持たなかったためである。その誤謬を是正するには、現在の事情の下で は必然的に古代染色の復原によるよ り他無いことに想到した。私は昭和 二年以来その実験を続けた。
著者の言葉より、
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