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女房三十六人歌合・絢爛王朝の世界

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東京都新宿区へ 女房三十六人歌合・絢爛王朝の世界等各種美術書紹介いたします。いずれも大判の美術書です。

女房三十六人歌合・絢爛王朝の世界
和歌の伝統を日本文明の中枢にすえる暗黙の前提に立って、いわば「文明の規範」をイメージ化したものと言えるのではあるまいか。

この島国の先人たちは、海のかなたの輝かしい文明を憧れつづけ、取り入 れつづけてきた。しかし、この国の文明は、よその文明の模倣に終始したわけではなかった。たしかに、百年ばかりの西欧文明とのかかわりは、まだ、模倣の域を脱し ているとは言いにくい。しかし、八世紀の奈良時代から本格的となる中国文 明の導入は、十世紀から十一世紀にかけての独自な文明の創造のさそい水となった。

この事実を象徴する出来事として、私は、日本独自の文字体系としての仮 の出現と、仮名によって表記された最初の勅撰和歌集、『古今和歌集』の出現 に注目したい。それ以降、勅撰の和歌集はつぎつぎと編集され、十五世紀なかばの『新績古今和歌集』まで、二十一集を数える至っている。

その間に、和歌は「歌物語」を介して物語を生み、物語は「歴史物語」を 介して和風の歴史を生み、『伊勢物語』、『源氏物語』、『栄華物語』、『大鏡』な どの古典群が創出された。 こうして、京都の宮廷に出現した独自な文明の萌芽は、十二世紀から十六世紀にかけての動乱を経て、京都から日本全域へ、宮廷貴族からさまざまな階層へと拡散され、十七世紀以降の江戸時代に、国民的規模の文明として成熟をとげた。

このたび複製刊行されるはこびとなった『女房三十六人歌合絵』は、和歌の伝統を日本文明の中枢にすえる暗黙の前提に立って、いわば「文明の規範」をイメージ化したものと言えるのではあるまいか。 -このたびの絵は、江戸時代初期、十七世紀後半の制作であるが、もともと十三世紀後半につくられた『女房三十六人歌合』の原形は、紫式部と同時代

の藤原公任の『三十六人撰』にならって、勅撰和歌集 に登場する女性歌人三十六人を選定したものであった。

選ばれた女性歌人たちは、公任の選んだ「三十六歌仙」に準ずる「女房三十六歌仙」として、その作歌と絵姿とが、この国の女性たちの「みやびのか がみ」とされたのであった。

-このたびの女歌仙絵の画き手は、狩野 探幽の妹の孫娘、当時流行の女絵師 として知られた清原雪信であり、歌の書き手は、摂政・関白をはじめとする 上流公家三十六人であった。西鶴によれば、雪信と公家衆の合作は、島原の 太夫の衣裳にまで及んでいたという。「みやび」の拡散は、このころすでに行 きつくところまで行きついていた、と言えよう。

歌仙の数を三十六とする点について、今のところ定説はないが、三宝に帰 依すれば三十六善神の加護がある(『灌頂経』)という平安時代のポピュラー な信仰とのかかわりを、私は想定している。

最後に、解説の筆者、若杉準治氏が、京都国立博物館において絵画部門を 担当する気鋭の美術史家であり、絵巻、似絵などを専門としていることを、 紹介しておきたい。


こちらは服飾史図絵・日本服飾史・服飾史図絵裂集。撮影は土門拳

服飾史図絵・日本服飾史・服飾史図絵裂集
土門拳撮影

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