さいたま市見沼区にて【陶芸書買取】北大路魯山人秀作図鑑

こちらは魯山人の大判図鑑になります。昭和54年発行で限定出版です。

魯山人逝いて二十年。 彼が生前にたえず多くの人々を名状し難い不快に陥れた、その傲岸不遜な言行、酷薄、狡智、愚劣、別して婦人に対する破廉恥等にかかはる世人の記憶は、やうやくにしてやや稀薄となって来た。

彼には、芸術院会員とか重要無形文化財、勲何等といふやうな国家による権威付けは何一つなかった。いはゆる在野のグループや会派を主宰し、或はそれに属したといふこともなかった。子孫がその後を承けて、社会に有力な地歩を占めているといふ事実も、まるでない。有力なジャーナリズムが、彼を高く称揚してゐるといふこともない。

魯山人の作品は、いはば作品外的なプラスをなに一つ受けることなく、むしろマイナスのイメージを今日なほなにがしかは随伴させてあるといつてよいであらう。

彼と同時代の多くの大家たちは、まったく事情がちがふ。彼らの作品は、死後も生前の国家による権威付けや勲章や、彼によって指導され恩恵を受けた弟子や会派や子孫によって、少なからず擁護さ れプラスを受けてある。彼らの作品は、魯山人作品のやうに、いかに貶さうとも否定しようとも、誰からも何の抵抗も受けぬといふわけにはいかない。

しかも、かかる事情に不拘、厳然として動かし難い事実がある。魯山人の作品の評価は、死後一貫 して高まりつづけ、近年はいよいよ加速度を以て高まりつづけてあるといふ一事である。 彼と同時代の巨匠大家の作品への評価も無論高いが、中に就いて彼の作品へのそれ、平たくいつて 人気は、〇然頭角を掴んでいる。