早稲田大学蔵資料影印叢書・遠西独度涅烏斯草木譜等古典書買取事例

こちらは遠西独度涅烏斯草木譜・5冊・早稲田大学蔵資料影印叢書・洋学編　こちらの影印シリーズはあまり見かけません

編者について書名および編者について一考しておく。書名は外題によって鐸度涅烏斯絵入〉とするが、原本の〇は涅の省文とみる。またこの漢字書名表記は大槻玄沢『六物新志』などにもあり、ドドネウスとよめるが、どちらかというと長崎通詞系の用字と推測できる。絵図も『六物新志』の絵と類似する感じをうける。本書の詳細はかつて私見をのべた (R・ドドネウスの“CRVYDT-BOECK”とその翻訳」。小著『航明蘭語学の 成立とその展開』所収)。したがって詳察はそちらにゆずるが、書名が意味 するところは、ドドネウス西洋本草書の翻訳ということよりも、同書か らその薬草の絵を転写(臨模)して挿入したという意味での絵入である。 最初にこれを紹介したのは岡村千曳で、つぎのようにのべている。

この書には序・跋なく、また訳者名も見当らないので、その成立 の由来を知ることが出来ない。また元来、何冊から成つてゐたのか も判らない。ところが、本書B巻(二冊のうちの一冊)の一五葉目の 表に、「Arum van Egijpten・芋・イモ主治同前」とあり、さらに簡 単な説明があつて、最後に「右永章先生一己之見ナリ」と附記して ある。この永章は吉雄耕牛の諱名であるから、この附言より推して、 本書は吉雄耕牛の訳編したものと思はれる。書名中の「鐸度涅烏斯」は「ドドネウス」と読むべきであらう(『紅毛文化史話』）