アイヌ伝統音楽 NHK発行 昭和40年 566P で4枚のソノシートが付属します。序文は金田一京助
北海道のアイヌ民族が伝承する民族歌謡は、他に類例のない特殊なものとし て貴重であるにかかわらず、民族自体が言語の音標記号をもたないため,その 伝承方法は口伝によるほかはなかった。
元来民謡は,民族のもつ產業,生活,宗教,習慣等々を基盤とし、そこに根 ざして生きてきた。従って,その基盤に起った変化が,民謡の上にも反映する のは当然のことである。特に最近のように,これまで最も人力のみに た農業までが機械化、合理化されてくると、労働能率を向上させるための歌も 不必要となってくる。
こうして民謡は,もはや昔それにたずさわり,生活してきた古老たちの間に、 わずかに記憶として残るだけの状態になってしまった。
この事実はアイヌ民族においても例外ではない。この少数民族の独特の生活 様式は,特に戦後急速に内地化し,習慣もまた薄れてきている。民謡もまた内 地のそれよりも衰亡がはなはだしく,古老たちの死亡とともに急速に失われつ つあり,今や滅亡寸前の状態となった。
札幌中央放送局では,この失われて行く世界的な文化遺産を,研究者ととも に総合的にとりまとめることを急務と考え,その調査を計画推進した。この期 間中に,研究者知里真志保博士を失うという事態が生じたが,関係諸氏のひた むきな努力によって発表のはこびとなったものである。
NHK では,これまでに日本民謡大観,東北民謡集等を刊行し、継続事業と して,なお刊行を準備中であるが,ここにまた貴重な文化遺産の一つを残し得 たことを喜びとするものである。
本書の上梓にあたり,このために寄せられた各方面のご協力に,あらためて 深甚な感謝の意を表するとともに,あわせて江湖のご批判を仰ぐ次第である。
昭和40年3月 日本放送協会
<本書の性格> 本書はアイヌ民族のもつ伝統音楽の現状,実態に関 する報告書である。民族音楽が,生活を基盤とするも のである以上,その背景となる風俗,習慣,言語など についての広汎な検討が要求されるが,本書では現状 の紹介を主体とするので,あえてその面での追求を避 けた。ただ,言語,ことに歌謡語は、日常の言語とは ちがった全く特殊な面をもっており,また過去にもこ の面に関する研究がなかったため,特に詳細な調査を 行ない、できるだけの解説を加えた。
こちらもアイヌ続きです。アイヌ風俗写真帖・アイヌの写真集ですが、特に奥付等もなくいつのものか残念ながら不明です。昭和初期頃のものでしょうか。当時のアイヌの生活様式を知ることができる貴重な写真集です。もう2度と手に入らないと思いますので画像にて紹介いたします。