神奈川県川崎市のお客様より ORCHID ATLAS 世界の野生蘭 唐澤耕司著他蘭関係の本を宅配にて送っていただきました。世界の野生蘭は端本ですが、珍しい本ですね。ありがとうございました。
刊行に寄せて
命ある植物が精一杯に育ち、花開くさまに感動しない人はいないでしょう。 花 はそれぞれに美しく、なかでもランは人を魅了して止みません。
ランの魅力は,今日なお盛んに種分化を続けていることによる多種類と, 花粉 媒介をする昆虫とのかかわりの中で進化したことによる多型化にあると思われま す。それぞれの姿, 形の変化は自然の妙としか言いようがなく,味わい深いもの です。
野生蘭は,交配種のような豪華, 豊麗さはないけれども,自然が創り出した釣 り合いのよさ、やさしさは人の心をなごませ,見あきることがありません。一輪 のランの花に心ひかれてより三十余年, 蕾がほころびるときの期待と感動は言葉 では言い表せないほどに今なお新鮮です。 そんなランへの感動と想い入れから, ランの姿を記録し続けてきました。
原種を知ることは,新しい交配種の作出のためばかりでなく,深い観賞, 栽培 の上達のためにも欠かせません。 自然保護のうえからも, 原種はますます貴重な ものとなります。 手元にある原種は大切に育ててほしいものです。
本書は,一般に栽培される美しい野生種,学問上重要な種をとりあげ、分類群 ごとにまとめてあります。 ランの分類では,古くからおしべの数が重視されてい ます。ランはおしべとめしべが合体してずい柱を形成し, それに伴い, 元来内外 2輪にそれぞれ3個づつあったおしべは→2個1個へと減少し, 花は放射相称 から左右相称へと変ってきています。 これらの特徴を備えたものをランの仲間と 考えると, ラン科はアツモリソウ亜科 (内輪のおしべが残っている)とラン亜科 (外輪のおしべが残っている)の2亜科となります。 本書では,基本的には前川 (1971) の分類に従い, 亜科以下の分類群 (族)は茎の伸び方, 葯のつき方, 花粉 の形質および交雑親和性などを考慮して配列してあります。
自然のすばらしさ, 命あるものの美しさ、尊さが見る人の心に少しでも伝わっ てくれれば嬉しいことです。 そして、このかけがえのない自然の宝が失われるこ となく,それぞれに所を得て生き, 健やかに育ち, 次の世代へと伝えられること を願わずにはいられません。