木村忠太展、木村忠太氏の図録をここのところ立て続けにご注文頂きましたが、いずれもイギリスからの注文でした。前回はCheshireから、今回はNorth Yorkshireから、別々の方からのご注文でした。たまたまなのでしょうか。それともイギリスではひそかに注目されている画家なのでしょうか。パリ、アメリカともともと海外では評価されている画家です。イギリスは国際郵便の状況が安定していますので、安心です。ありがとうございました。
1917年四国高松に生をうけた木村忠太は、1953年夫人とともにフラン スに渡り、以後1987年7月3日70歳で急逝するまで、パリの地で画家と しての生涯を貫きました。その創作活動においては、造形にたいする厳 しい求道的姿勢を堅持し続けました。とくに1960年頃以降、抽象性の強い色面とデッサン風の線による独特の作風を確立してからは、ソルボンヌ大学教授ジャン・グルニエの支持をもえて、精力的に大作を発表し続 け、フランス政府・パリ市をはじめ諸美術館に作品が買い上げられてお ります。そして1984年、フランス芸術文化勲章であるChevalier de ‘Ordre des Arts et des Lettresを受賞し、翌年にはアメリカ・ワシン トンのフィリップス・コレクションで大展覧会を開催、成功をおさめる など、海外での評価は日ましに高くなりつつあります。当館はかねてよ り木村忠太展実現の構想をもっておりましたが、この急逝によって開催 の時期が早まったものであります。
このたびの「特別展 木村忠太」は、日本ではじめての本格的な展覧 会となりますが、その内容を彼の画風の確立された1965年以降の作品に しぼり、1980年のパリ・グランパレ美術館におけるFIAC (現代美術国際 フェア) およびフィリップス・コレクションでの展覧会出品作を中心に 構成いたしました。「光の画家」とよばれ「心の印象主義」と自負した、 木村芸術の理解の一助となれば幸いと思います。なお本展の開催にあた り、作品の出品をご快諾くださいました木村幸子夫人、各美術館、所蔵 家の方々、さらにご協力いただきました現代彫刻センター、ギャルリー たからし、とくに南條彰宏氏を代表とするアート・ヨミウリ・フランス、 ならびに関係各位に深く感謝申し上げます。