日本武道大系10冊+兵法家伝書入荷いたしました。昔こちらの本を営業にて販売していた方のことで、兵法家伝書も付属しておりました。今回は直接持ち込みいただきました。ありがとうございました。
武道哲学ともいえる技法論・心法論を発展させ、人づくり国づくりへと武道を方向づけ、現代人の生き様 に対しても多くの示唆を与えていることも見逃がせない。
現代の著しく競技化した武道が、一面において近代的な科学理論のもとに研究されつつあることや、そ うした研究が武道の近代化にとって必須の要件であることもまた事実である。それにもかかわらず、現代 武道のルーツに対する関心は決して衰えていない。ことに欧米人の武道家の中に、そのような傾向のみら れるのはオイゲン・ヘリゲルの先蹤をあげるまでもなく注目すべきことである。
以上のような回顧と展望のもとに本『大系』は十数年前編者等によって上梓された『日本武道全集』七 巻所収内容を、あらためてその原典、またはそれに最も近い資料によって訂正増補して全十巻に増幅し た。内訳は伝書編八巻、随筆編一巻、武道史編一巻である。 次に本大系の特色ともいうべきものをあげてみる。
まず伝書編ではなるべく源流的なものを中心にえらんだ。【 源流諸流儀を中心に、それらの下流にあ って近代武道と連繋の深い幕末新興の流儀を収録した。日資料の最も多い剣術は三巻に、弓術は一巻 に、柔術は合気術とともに一巻にまとめ、合気道は合気術と区別した。 新たに「直心影流」薙刀を収 載、天道流とともに、斯道の双璧とし、総合武道としての、直心影・天(道)流兵法との関係を明らかにした。四空手、合気道を充実させ、新たに少林寺拳法、太極拳を加えて一巻とした。後の二者は、他の在来柔道一般とともに、東洋の武道として、わが古流武道と古くから交流しながら発展してきたものであることは前にも触れた。山武道に関する論説約三十編を一巻にまとめた。『五輪書』や『兵法家伝書』その他論説と伝書との区別のつきかねるものもあるが、一応相伝形式をとっているものは伝書編に収めた。武道論を武芸随筆とすることにも異論はあろうが、とりあえずこのように呼ぶことにした。六最後に現代 武道と、いわゆる古流(式)武道との関わりや、社会情勢の変化に伴う武道の推移の跡を明らかにし、現代 武道の現状反省とその未来への展望を示唆するために、「武道の歴史」編を加え第十巻とした。 本『大系』の作成に当っては、予想以上にてまどり、その間かなりの曲折があったものの、官公私立の 図書館、新人物往来社、文庫関係者の格別の寛容とど好意、同学諸賢の心からの励ましとご協力によっ て、ようやく上梓まで漕ぎつけることができた。ここに各巻ごとに芳名をかかげ深甚の謝意を表し、併せ て本『大系』が大方の清鑑とご批正のもと、斯界のために幾ばくかの寄与ができればと深く祈念するもの であります。