たまたまですが、前回に続き、盆栽の豪華本です。盆栽・美と調和・清香園銘品陳列集 この清香園は、埼玉県さいたま市にあり、事務所から車で15分くらいのところにあります。人形の岩槻、盆栽の大宮、と言われるように海外からも盆栽愛好家の方が訪れます。こちらは限定本ではありませんが、昭和57年発行ですので徐々に手に入れにくくなっているかもしれません。序文は清水公照氏で口絵は奥村土牛氏、日英表記の豪華本になります。ありがとうございました。大貫忠三氏ほか盆栽の大家も協力しております。
人々に静かな里心があるように,植物にも里心があるのでしょうか。盆栽に見るかも。 花木は、清らかに美しい。そこには栽人に恵まれ育まれた愛,無の里が存在し表現して からでしょう。迎える春を喜ぶ姿が美しいように,雪解けを待って咲く野山の一輪の花
温雅な心が表われています….。春夏秋冬を追って撮影した思い出を残して,あらまし がきを書くことになってしまった,まことに早いものです。永かったようでもあり ったようでもあります。誠文堂新光社より出版のお誘いを受けたのは確か昭和51年の真~ ろでしたが,私共の都合でご返事をしなかったところ,翌年の秋ごろ,また熱心にお話も。 いただき,お引き受けすることになりました。しかし,引き受けてはみたものの,分井の 本作りは大変にむずかしいことが多く,特に,限りある期間において動きのある盆栽美おどうとらえ,表現し,調和させるか,大変な難問でした。ただ,私共が常日ごろ心掛けて いることを忠実に守っているありのままの姿をこの本に表現すればいい,また ておくだけの本ではなくて何回も何回も開いて見ていただけるような親しみの持てる内容 の本にしたい,ということを常に念頭におき,取り組んできたつもりです。
対象とする素材の美を引き出して表現し,美を持続させて守ること,その繰り返しが生 きた芸の道・盆栽であることは言うまでもありません。そして盆栽は常に気高く生き生き としていることが求められますが,反面,そこには生きる物の弱さも隠されており,当然 それを再生させることは私共に課せられた責務でしょう。その意味で,今回の作品に再生 中や改作中のものも数多く含まれていることをご理解いただきたいと存じます。「芸の道 には限りがない」という点から言えば,すべてが「完成への過程にある作品」といえるか も知れません。読者の方々のご批判を賜われば幸甚です。それを糧に、さらに精進に努め たいと存じます。
今回,盆栽美の奥の表現として,四季折り折りの床飾り,陳列を採り上げてる 表を試みましたが,尊敬する東大寺の高僧,清水公照先生の書,版画などの掛け軸 額に数多く接し,盆栽とともに飾らせていただけただけでなく,巻頭に麗文をも頂戴」 感謝の言葉もございません。
本書をまとめるために「盆栽美と調和」のテーマのもとに,数多くの写直われ、 てきました。本書に発表したものは,その数多くの写真の中からテーマに沿って儲躍 たものです。これも多くの後援者の方々のお力添えがあって初めてできることですね 前を上げたらきりがありませんが,写真撮影の面で高木體二,久保虎二郎の両氏には、 ご協力をいただき、厚くお礼申し上げます。
移ろいゆく日本の季節に従って盆栽を並べ,ところどころに草物と陳列を配し, クロー ズ・アップ写真で盆樹の隠された美を現出させるなど,編集にも工夫をこらしたつもりで すが,どこまで本当の盆栽美をお見せすることができたものやら……折しも真冬を迎えて 寒さに耐え忍ぶ棚の盆栽を見ていると,私共の力のなさを感じることひとしおです。が, この本が国の内外を問わず一人でも多くの盆栽を愛する方々の目に触れ、少しでも盆栽道 の発展にお役に立てば,これに過ぐる喜びはございません。最後までご指導・ご協力をい ただきました後援者代表の越村実氏,および菊岡成泰,金子一義の両氏に改めて心からお 礼申し上げる次第です。また,共に全国をかけまわるなど苦労をお願いしたカメラマンや 編集者の方々,翻訳者,それに印刷や製本に携わった方々にも厚くお礼申し上げます。 1982年 新春を迎えて