鴨居玲素描集・レイカモイドローイングス他美術書買取事例
素描・鴨居玲
伊藤誠
鴨居玲さんは,ひたすら人間を追求する画家です。単なる姿態,表情をではなく,それらをこと て、ともかくる生きねばならぬ人間の生きざまと、実のところ生きるとはどういうことなので、 う問いかけを,人の動きや語りかけに託して描いているのです。したがって、鳥居さんのデッサン はタブモーへの過程を見せるだけの代物ではありません。それは肉体の奥の激しい血の流れ、さ 切れることのないすさまじい息遣いの生の表出なのです。
「四和54年10月に刊行された「鴨居玲素描集一酔って候一」を紹介する時,私は上記のようなことを書いた。 気持ちは,もちろん今も変わってはいないが、作者が逝ってしまった現在、あの“生の表出”は実に“死の途んと 一体のものであったということを強く思わざるを得ない。もちろん,生の行きつくところが死で,やがってい るがそこへ到達するのだということは暗黙裡に納得はしているのだが,通常なるべくなら避けて通れる間はそう したいと思ってるいる。鳥居さんは、そのような“死”を独りはっきりと見据えながら作画していた。青年時代の “自画像”に始まって、自ら選んだような“死”の作品に終わるこの素描集で,個人的交遊の思い出をまじえながら、 画家鴨居玲の“人と作品”を素描してみたい。