The Best Nudes 全10巻送っていただきました。監修は細江栄公氏です。
細江英公 ここに10巻目が 完結し、ザ・ベスト・ヌード・シリーズの全10巻がようやく完結した。
第1巻の躍る肉体・アンドレ・ド・ディーンズピーター・バッシュが 1979年5月に発刊されて以来、完結までに約3年半の年月を費やしたが、最初の企画から準備期間を加えると5年近くかかったことになる。全十巻 に収録した写真家は24名だが、この間に収録のために作品を写真家の数は80名、目を通した作品数、およそ20000点は下 らないと思う。しかし、こちらで希望してもさまざまな理由からどうしても収録 できなかった作家もいた。誠に残念だが諦めざるを得なかった。 理由の一つは、版権料が高すぎて、このシリーズの良い作品を安 価でというポリシーと合致しなかったこと。第二にヘアーの問題であ る。通常人からみれば何ら問題にならない当り前で健康なヘアーも今 の日本の法律では駄目だという。いずれ社会通念の方がはるかに超 えて行くと思うが、これも現段階では止むなく我慢しなければならなかった。
こうして全10巻を目前にして言へることは、ヌードを主題として作品を 表する写真家は今までも数え切れないほど存在するが、さて1人で1 冊の作品集にまとめることの可能な写真家はそれほど多くはいない、と いうことである。しかし、作品の数は少なくてもすぐれた写真家の珠玉の 品を1点でも2点でも集めて、世界の写真家によるヌード作品のアン ソロジーを編集することもやりたかったことのひとつである。いずれ別として出版できることを願っている。
また、全10巻をまとめてみるとやはり1巻や2巻では感じられない圧倒 感があり、作家の多様性の中にも国別や世代による美意識の違いがよ くわかる。今回のシリーズには登場しなかったが、日本の写真家による ヌード作品を頭に浮かべながら見ているうちに大袈裟な言い方をすれ ば、ヌード作品をとおしてみる時代の表徴とその比較文化論が語れ るのではないかと考えるのである。
この世界のベスト・ヌードシリーズは現在世界で現役としてもっとも華やかに活躍 している作家次回配本作家を含め25名を細江英公氏を中心に私がお手伝いす る形で選び出したものである。
ピーター・バッシュや、アンドレ・ド・ディーンズは古くから我が国で紹介されていた が、その他の作家は一般にはまだ日本では余りホヒュラーではなく初めてその作 品に接した読者諸君も少なくないであろう。 資料をいろいろ調べてみるとヌードを撮っている写真家は世界にはいっぱい、いることはいるが優れたヌードを永年に亘って撮りつづけている作家は極めて少な いことがよくわかった。
読者諸君はこのシリーズの中にエドワード・ウェストンやウィン・バロック、サム・ハ スキンス、ジョン・ローリングス、ノーマン・パーキンソン、アーヴィング・ペンらの 作品が選ばれていないことを不審に思われる方も多いと考えられるが、エドワ ード・ウェストンやウィン・バロックのヌード作品の版権は物凄く高価でこのシリー ズの定価ではとても採算がとれず、またその他の前記の作家は、今ではその大 半が広告、ポスターなどで活躍している人々で、これ又ロイヤリティが高く収録 を断念せざるを得なかった。
しかし、このヌードシリーズの出版は過去の日本ヌード写真史上画期的なもので あることを自負している。永遠に残る出版であろう。
芳賀書店は非常にユニークな本を出す、一つの例をとってみよう。 私の親友辻まこと(故)の諷刺詩画集虫類図譜の出版である。 この本は“歴程”に1954年から連載されたものをまとめたものだが彼のサタイ アーは抜群でアメリカのソウル・スタインバーグやフランスのルイミテルベルグに 決して劣らない素晴らしいものだ。この本は限定1400部で定価1800円だっ た(1964年刊)が今では古本屋で一万円以上するという。 話が横道に外れたが、前述の如く諸般の事情でウェストンその他の作品は収 録できなかったが、いずれ機会をみて世界ベスト・ヌードシリーズの別巻というか たちで素晴らしい本として出版できる日が来ることを私は堅く信じて疑わない。 終りにのぞんで芳賀書店社長芳賀章氏と細江英公氏と構成を担当していただい た勝井三雄氏に心からの感謝の詞をのべたい。