埼玉県さいたま市緑区で日本の庭・正続等建築書4箱 建築書買取事例
何冊か興味深い建築書(庭園書)があるのですが、今回紹介させていただくのは重森三玲の長男・重森完途監修の日本の庭園・正続です。昭和50年代に発行されていますが、今でもお探しの方がいらっしゃいます。
わずか2冊で重さ約18kgという古本屋泣かせの本でもあります。また撮影は土門拳・緑川洋一・入江泰吉・前田真三、序文は井上靖・山本健吉と錚々たるメンバーが名前を連ねています。当時の定価が2冊で148000円ですから、いわゆる豪華本ですね。それにしても当時はどういう方が購買層だったでしょうか?
日本の庭・正続
この書は昭和五十年六月二十五日に發刊された『日本の庭』の続編となるべきもので、正編に掲載し得なかった全国の名園を及ぶ限り取材してその解説を付けた。
それと共に、流派庭園を論じてみたが、各時代に出現する作庭者は、特定の人を除いてその生没年 月日さへ不明なものが多く、また作品も文献上にあっても現実には消滅したものも少なしとせず、作庭家と作品を中心とした論の展開は困難なものとなった。そのために、庭園と同時代に生きてゐたかかは りの深い美術の動向と、或いは文学思想や、公武僧俗の思想背景から、庭園の流れを見てゆくやうにした。まだまだ書き込みかたが不充分で足りないところが多く不満足であるが、新しい意見も少しは 加へたつもりである。
嘗て日本庭園には輝かしい日々があって、我々の祖先が多くのすぐれた作品を遺して吳れているが、 いかなる時代の如何なる作品も当時の社会の政治経済と無縁なるものは無く、それをくぐりぬけ、十全の努力をして作品を作り今日に至らしめてある。さうした作品を観るにつけ、思ふことは、単にそれを庭園史の上に置いて考へるだけではなく、その作品の背後にひそむ人間の声を聴くことなしには、作庭者の生きた理念を掴み得ないと云ふことである。このことは、作品を遺されている我々、そして これから遺してゆかなければならない我々にとって反省すべきところであろう。