居合道真諦 増補再版・大日本居合道図譜 河野百錬等 【剣術書・剣道書買取】

足立区へ出張買取事例 居合道真諦 河野百錬等武道書入荷しました。昭和37年の非売品ですのでこちらも希少品です。ありがとうございました。

自序

今から二十六年 前の拙著、 無双直伝英信流居合道、並に二十年前の著書大日本居合道図譜に於て、当流個々の業前については、 恩師穂岐山波雄先生並びに福井晴政先生の御教えをそのまま細大漏らさず正しく伝述した心算であるが、 正統の正流当流学ぶものの中に多々当流に悸るものある嘆ずべき現状に鑑み、 斯道の眼目と考 へらるる最も基本的な問題について、先師の面授に基づき之を記述し、 其の異を正さんとして、昭和三十三年二月、無双直伝英信流歎異録の小著を刊行したるところ、同志多数の要望に依り再版の必要を生じたるを以て、此の機会に予て数度山形県楯岡鎮座林崎居合神社に参拝したる資料に基づき、林崎甚 重信公の伝記の一端を記し、併せて平素信ずる斯道の小見断片も掲かげ、茲に居合道真諦と名付けてこの一巻 を刊行せり。

幸に同志のいくらかの参考ともならば、望外の幸ひである。 
昭和三十七年二月十九日

無双直伝英信流居合兵法 正統第二十代宗家 正統第二十代宗家
河野稔 百錬識

無双直伝英信流居合兵法略説

居合兵法は、古来の剣家に依って苦心研鑽の暁、 創案されたる日本刀、即ち真剣を以て行ふ処の心身修養錬磨の道であって、急変に処して直ちに之に応じ己が身を守る刀法で、其の坐作進退に依り強靭な心身を錬成するは勿論、敵前に(仮想の)自己を究明する無双の道であることは恰も、仏家の座禅に匹敵し、日本武道の根源であり、処世の大道である。

居合の初祖は、永録(四○○年前)年間の人、奥州(山形県村山市大字林崎)最上家の臣、林崎甚助源重信公にして其の流名を林崎無双流、又の名を重信流と唱へた。

下って享保の頃(二四〇年前)当時空前の名手として聞えし、正統第七代長谷川主税助英信公が古伝の・ 業に独創の技を加へ流名を茲に無双直伝英信流と改め、其の郷国、土佐の国に之を伝えた。

爾来正統第十九代宗家迄土佐の国の不出の御流儀として伝承されたが、偶ま昭和元年大日本武徳会大阪支部は、居合兵法の真価と必要を認め、剣道柔道に併せて其の修錬を提唱し、以来毎年土佐の国より宗家を招聘し、講習会を開催する事二拾ヶ年、受講会員数二万余名に及び、其の盛況は武道界に未だ比肩するものが無かった。 如斯き時期に当って、福井春政先生は、深い御意志に基き、正統第二十代宗家を阪府の地に移す事を決意せられ昭和二十五年四月十四日、攝州住吉大社 御神前に於て、秘刀伝授、紹統允可の式典を厳粛に挙行され、に河野百錬範士は正流の正統第二十代宗家を継承された。

之より〇、志賀矩剣道藩士を会長に河野百錬先生を始め、 高田直仁、 藤本錬心の諸士を中心に昭和六年、大阪の地に居合道会団、大日本居合道八重垣会を結成 し 逐年隆昌を極め、昭和二十年 、其の会員数六百余名を数ふる全国唯一無二の居合道の会団であったが、昭和二十年三月十四日其の道場である大阪武徳殿の戦災焼亡に依り会員は四散し、久敷く道の修業もなすよしも無かつたが、昭和二十五年五月同志相集ひ、現宗家を中心とする「無双直伝英信流居合兵法指導会」を創立し、目下同志多数が南海道場で斯道の修錬中である。

無双直伝英信流居合兵法指導会本部　昭和二十五年八月五日記

畏くも神国一天万乗の神国大君の御稜威により、古今未曾有の大東亜戦争は皇国の威武全世界を震撼し宇宙征くところ疾風枯葉を捲く大戦果を挙げつつありここに大日本の大精神でありかつ我神剣日本刀の精神たる破邪顕彰の大道無礙縦横に発揚せらるる時にあたり、真剣道居合に依りて個々の明徳を究尽錬磨し、以て至尊に帰一し奉らんとする同志日を遂ひて増加する事は洵に皇国のため欣快に堪えないところである。

不肖、故恩師の徳に依りて聊か斯道を学び浅学を顧ずして裏に昭和十三年四月無雙直伝英信流居合道の小著を公にして、畏くも梨本宮殿下台覧の光栄に浴し今ここにその姉妹書大日本居合道図譜お編述せり。本書は主として初心者の為にと略説に努めたるも、限られたる紙面なお不十分の点不尠るを以て既著無双直伝英信流居合道を参照し、初心の人々にその修養上幾分の得る処あらば望外の幸である。

再版の辞

道縁により昭和二年八月、大日本武徳会大阪支部に於ける第一回居合術講習会を機に、当流に 入門する事を得た私は、いまだ先輩に依って当流正技の解説された文献の皆無である事を知り、 之を学ぶ人々の不便を痛感して、浅学を顧みず入門研賛拾五ヶ年の後ち、写真に依る解説書の刊 行を計画し、幸い昭和十八年秋その発刊を見たが、部数もわづかに過ぎず、以来当流の全国的普 及により希望者激増の為め、既に十年前絶版となり今日に至ったが、昭和二十九年春居合道の専 門団体、全日本居合道連盟創立さるるや同志の激増を見、就中当流を修錬する全国航空自衛隊居 合道部の創設に依り その同志を初め多数居合人の 本書再版の希望に鑑み、 茲に再び刊行する事と成った。

元より恩師より伝授されたる技は之をそのまま 後世に伝承する事は 不肖の責めとの信念であり、元本の写真不鮮明なるものも之を改版せず、解説文も一切改訂する事無く、いささかの詳小見を加ゆるに止どめ、初版そのままとして再版発刊する事とした。

申す迄も無く本書は、無雙直伝英信流正統第十七代宗家故大江正路先生、恩師第十八代故穂岐 山波雄先生、第十九代恩師福井春政先生(先生は明治17、3、8生、当年83才)の御高教をそのまま、之を護持し後世に伝承する念願の下に記述したもので、之を見る当流有縁の士は毅然不動の信念を以て、何等一点の疑義を持つ事無く、本書に解説せる正統の正技に精進されん事を切願 するものである。

昭和四十二年 五月五日

全日本居合道連盟理事長 居合道十段名人位 無雙直伝英信流正統第二十代宗家河野稔百錬

一、本書の内容はすべて先師より伝授されたる当流の掟で、即ち業前のあり方であり、飽迄も形態外形そのものに過ぎずして、心の所は当底筆紙に現しがたし。 従って居合道の窮極の眼目たる、内面的精神面の肝要なる点は各自の境地に於て自分自身 が研鑽自得するの外無く、依って 当流の掟て(形、技)に精通の暁き、 各自がその技に イノチの息吹きを与へ格調高き技を創造する事に専念し、心の位ひ得る事を努め、以て真 如に到達する様、お互の生涯をかけたいと念ずるものである。

一、本書の再版にあたり、印刷関係のすべては多年の同志である北海道の石垣豊太郎教士の絶大なる配慮によるもので同剣士に深厚なる謝意を表するものである