空手道・第一巻・大塚博紀 空手・唐手書買取事例。和道流宗家大塚博紀氏による空手道です。10年程度前ならば多少は流通もありましたが、最近はほとんど見かけなくなりました。非売品です。
私の言葉
昭和25年に『空手術之研究第一部形之部』の小著を千五百部プリントして和道会会員の一部に頒布し,その熱望に応え得たのであった。私は元来文筆に拙ないので筆を採ることは苦手である。当時東京大学空手道部の主将であった小島哲也君と次代主将 の紫谷哲朗君の熱烈な助力に引摺られて書いたのがこの小著であった。全ての武道修業がそうであるように空手もまた直接指導者について修業してさえその上達は容易でない。まして文字に頼る独習修業は尚更である。上達の道は唯だ一つ,良師のもとに撓まざる修業と積年の努力によって自得する外はない。著者もまた口でさえ表現し難い感どころを筆による表現は非常に困難でその思う半も書きえない。
これを思うとき良心が咎めて出版に気が進まず,今日まで続刊が出せなかった。殊に文筆能力に乏し い私には非常な難業でもある。その後拙著の出版を切望するものが日増に多くなった ので思い切って決意をした。何かの資料にもと年来書きとめておいた原稿を整理して 出版したのがこの著である。今度の出版は後援会が私の喜寿を祝し紀念事業の一つとして計画され,昨年中に書きあげる約束だったのが例の横着も手伝って誕生日の6月1日出版に間にあわなかった。私の毎日は財団法人全日本空手道連盟,全日本空手道連盟和道会,日本古武道振興会と一人三役の仕事に追われ、加えて全国内の巡廻指導で旅行がちでもあり,殊に昨年は3ヶ月半にわたる欧米への海外指導もあって約束が果せなかった。
今後は続刊に全力を傾け可及的早い時点に完了させる覚悟である。引 きつづき,形の解説, 基本組手の形, 待ち手の形, 懸け手の形,居捕の形, 立合の 形,形の応用変化,直組手の形, 女子護身術, 警察官用逮捕術,短刀捕, 真剣白刃捕,殺活自在の法,と順次刊行の予定である。
この著は全て私個人の研究に基づくも のであるが表現法に自分自身まだ不満に思う点もあり不充分な個所もあるので後日補足する考えである。この著が読者の研究に幾分でも寄与するところがあれば之に過ぐる幸はない。
追申
本書は昭和44年秋までには出版出来るよう努力することを確約したので出版後援会は既に予約申込みを受けつけていました。だが相変らずペンが重く多忙も手伝って遅延に遅延を重ね、ついに年を越してしまった。2月27日のロンドンにおける和道会全欧大会に出席することが急に決定したので2月3日羽田を立ちました。出発に先だち原稿提出の請求をうけたので年来書き集めておいたまま全然整理のついていない原稿 を山田金生君に渡しました。
加筆に加筆を加えた原稿で私自身にも判読しにくい程。 雑なもので実は心配していましたが,2ヶ月足らずの留守中にこの原稿を整理して仮 印刷し3月29日帰国早々その校正を求められたのには驚くと共に感謝でいっぱいでし た。それは長谷川馨,増賀従男両君の熱心な応援で整理したとのことであった。改め て3君に対し感謝の意を表します。早速校正にかかったがまた例の癖で各所に筆を加え,更に補足したい事項が次々と思い出されるので容易に完成しそうもありません。
「下手な考え休むに似たり」と云う説もあるので割愛して次刊に譲り出版に踏み切りました。出版後援会諸君の誠意と,熱情に対し深く謝すると共に遅延を陳謝いたします。